乳腺センター

乳がん治療方針を決める3つの鍵

乳がんという病気は、多様で、患者さん一人一人で異なります。
自分の乳がんのタイプを理解し、治療方針を選択していただくために3つの要素があります。

  1. がんのバイオロジー
  2. がんのバイオロジーとは、がんの発育のスピードは速いのか、遅いのか・どのような薬剤が効果的なのかを知ることです。
  3. ステージ
  4. ステージとは、がんの進み具合です。がんの大きさ・リンパ節転移・遠隔転移の有無で判断します。
  5. 年齢・体調・病歴・ライフスタイル
  6. がんのバイオロジー、ステージに加え、その方の年齢や体調、病歴(時には家族の病歴)も重要です。さらに、家族のことや仕事のこと、趣味のことなどライフスタイルが治療方針の決定に大きく関わることがあります。
乳がん治療での治療方針を決める3つの鍵

手術療法

乳がんいう病気の治療のひとつに手術療法があります。
乳房温存手術を全乳がん手術例の約半数の方に行っています。
大きなしこりの場合は手術前にホルモン治療や化学療法を行い、しこりの縮小の後に温存手術を行うこともあります。また、温存手術後の放射線治療は原則的に行っています。

手術療法

センチネルリンパ節生検を行い、無用な脇のリンパ節を切除する手術(腋窩リンパ節郭清術)を省略しています。
転移診断にはOSNA(オスナ)法という遺伝子診断を用いています。

乳房再建について:乳がんで乳房全部を切除される方に乳房再建手術の準備としての組織拡張手術(エキスパンダー挿入)を形成外科専門医(矢永博子先生)の協力のもと行っています。
> 形成外科外来(乳房再建手術)

薬物療法~5つのサブタイプ

乳がんは患者さんによりそれぞれが異なった性格を持っていることは以前から指摘されていました。
近年、遺伝子検査により乳がんを大きく5つのタイプに分ける考え方が示されました。しかし、日常診療では遺伝子検査は困難です。そこで、ホルモン感受性(エストロゲン、プロゲステロン受容体)、HER2(ハーツ―)、そしてKi-67(増殖能のマーカー)を病理学的に調べることで、5つのサブタイプを区別できることがわかりました。このサブタイプの特徴に合わせて治療方針を立てていきます。

手術後の薬物療法の選び方は

ルミナル A
ホルモン受容体陽性でHER2陰性、かつKi-67が低い場合
ホルモン感受性が強く、化学療法は不要

ルミナル B
ホルモン受容体陽性でHER2陰性であるが、Ki-67が高い場合
ホルモン療法に効果があるが不十分な場合があり、化学療法が必要

ルミナル HER2(ハーツー)
ホルモン受容体、HER2ともに陽性の場合
ホルモン療法に加え、化学療法+分子標的療法が必要

HER2(ハーツー)
ホルモン受容体陰性で、HER2陽性の場合
化学療法+分子標的療法が必要

トリプルネガティブ
ホルモン受容体陰性、HER2陰性の場合
化学療法が有効

多遺伝子アッセイってどんな検査(多遺伝子アッセイとは?)

> 多遺伝子アッセイとは?

治療をするうえでのガイドライン

ガイドラインとは
ガイドラインとは乳がん治療の最新情報をもとに専門家が集まって討議し、その時点で最善であると合意の得られた治療法をまとめたものです。

標準治療は「並」の治療?
標準治療とは、現時点で、患者さんに最も効果が期待でき、安全性も確認された、最善の治療のことです。

国際的「標準治療」の実践
乳がんの治療には、手術療法、薬物療法、放射線療法などがあります。
実際に個々の患者さんで治療方針を決める際は、それらの中から適切な治療を組み合わせます。
最近、乳がん治療の研究が進んだ結果、最適な治療法は一人一人異なることがわかってきました。
そして、最善の治療を受けるためには、まず自分の乳がんについて正しく理解すること、そして、自分の乳がんに対する「標準治療」が何であるかを知っておくことが重要です。

治療をするうえでのガイドライン

チーム医療

私たちはチーム医療としての取り組みに努めています。医師(乳腺外科、放射線科、病理)、看護師に加え、薬剤師、細胞診技師、超音波検査技師、放射線技師、栄養士、理学療養士、ソーシャルワーカーなど多くの専門職があなたの治療に携わります。
乳がん患者の会“肥後ほほえみの会”に対して、定期的な勉強会や新聞という形で情報提供を行っています。

乳がんは早期に見つけて治療をすれば、完治できるがんです。早期発見がとても重要です。そのためにもマンモグラフィ検診を受けましょう。また、乳がんの知識を多く取り入れ、一緒に乳がんに立ち向かっていきましょう。

チーム医療